出品作品一覧

《白斑》伊藤 藍

《常夜》常行 哲弘

《造花》中村 愛子

賞選考

大賞

白斑

準大賞

優秀賞

奨励賞

主催者特別賞

審査員所感

立島 惠(佐藤美術館 学芸部長)

未知のウイルスに怯えながらの門出となった本賞も早いもので4年目を迎えた。
これまで多くの制約を強いられながらオペレーションを行ってきた事務局、逆風と言える状況下においても情熱を絶やさず作家の未来のため推進してこられた主催者に、心より敬意を表したい。
さて今回の推薦作はいつになく攻めている印象を抱いた。

大賞の伊藤藍「白斑」は、写実描写の圧倒的力量を遺憾なく発揮し、前屈した人物を描き切っており、それはもはや人物を越境し肉体のマッス(塊)へ飛翔を遂げていた。準大賞の川田龍「untitled(Bacchus4)」は、伊藤とは対照的な荒々しい筆致で目を惹き、その存在感は負けず劣らずであった。優秀賞の齋藤愛未の点描に近い独自の筆法であらわされた「光の瞬き」は、画題さながらのイリュージョンを見せつけていたし、同じく優秀賞の澤田麻実「まぜこぜ」は、日本画絵具を盛上げることでつくりだされた大きさの異なるドットの夥しい集合による素材感と、対象の物質感の接合が見事だった。

奨励賞の椎野倫奈、太田琴乃、常行哲弘、小松拓也と主催者特別賞の近本祐紀子については、其々表現の方向性を明確に指示しながらも果敢にその領域を押し広げようとする意志が感じられ、今後が楽しみである。また受賞を逃した作品にも気になるものが多く、機会があれば作者とゆっくり話がしてみたいと思った。

大矢 英雄(洋画家、広島市立大学名誉教授)

大学を離れてから若い作家と接する機会が少なくなりました。その作品を拝見出来る貴重な機会として、どんな刺激を受けるだろうかと今回も審査会を楽しみにしていました。

大賞の伊藤藍さんの「白斑」は若い作者に似合わず、さらりと落ち着いた中に確かな完成度を漂わせる内容で好感を持ちました。が、色調がやや単調であることに私は減点で最高点は差し上げられませんでした。

準大賞の川田さんの作品も目立つもので、油絵具らしい荒々しい筆使いに安心感と共感を覚えました。無題で副題にバッカス4とありましたが、人物像はイエスのようにも思えるので川田さんがお酒を好きなのでしょうか。気になるところです。

齋藤さんや椎野さん、小松さんの作品も大変魅力的で、私自身の作品にも取り込んでみたいとその技法をじっくりと観察させて頂きました。

審査員受けが少なく残念でしたが、近本さんの作品は、壁のシミも美しいと言ったレオナルドの精神性に近いものを感じて、飽かず拝見しました。

AIが人の肩代わりをする時代が迫っています。最近の絵画表現の流れにもテクノロジー進化の影響を如実に感じます。絵画はどのように変わって行くのでしょうか。絵画の魅力とは?魅力ある絵画とは?
絵画が困難な時代に、それでも前に進もうとする若き画家たちに幸あれと祈っています。

倉島 重友(日本画家、日本美術院同人、広島市立大学名誉教授)

「絵画の筑波賞」展は4回目を迎えましたが、若い画家の意欲作に触れさせてもらえるのは実に楽しいことです。今回も全体に迫力・力強さを感じましたが……難しい事ですが、若々しく迫力が有り、尚且つ仕事も丁寧であって欲しいと思います。

大賞 伊藤藍さん「白班」不思議なポーズの人体、極端な遠近で迫力があり仕事もとても丁寧でした。

准大賞 川田龍さん「Untited (Bacchus 4) 」荒削りではあるが、何か訴える強さを感じました。顔の描写に比べ首から胸への表現にもう少し密度があると良かったと思います。

優秀賞 齋藤愛未さん「光の瞬き」柔らかい色調でありながら、色を塗り重ねることにより強さを出しています。構成面でもう一工夫が欲しかったと思います。

優秀賞 澤田麻実さん「まぜこぜ」大胆な構図で迫力がありました。綿密で美しい色調でしたがモチーフのせいでしょうか、ちょっと不気味さが気になりました。

画家を志す若い才能を応援する「絵画の筑波賞」展の更なる発展を祈っています。

玉川 信一(洋画家、二紀会理事、筑波大学名誉教授)

大賞の伊藤 藍 作《白斑》は、デフォルメされた人物像を画面中央に据え全体が褐色調でまとめられている。適格な形態描写と破綻のない色調が強い量塊の存在感を主張する作品である。準大賞の川田 龍作 《untitled(Bacchus4)》は白色で塗られた顔面と奔放な筆触がとても新鮮な印象を与える作品である。酒神バッカス(ディオニソス)4ということは連作なのだろうか。Untitledなのにずいぶん意味深なタイトルの()付である。そういえば頭に被っているらしき冠は葡萄の蔓のようにも見える。どちらも最初に審査会場全体を見まわしたときに私の目を引いた作品であった。結果として破綻の少ない方を支持することにしたが画面の質の違いという他はない。他に齋藤 愛未作《光の瞬き》椎野 倫奈作 《白露》の柔らかな色調や太田 琴乃作《歳月》の強いマチエールが目を引いた。

様々な事象の日常的な不安感が未だすっきりしてはいないにしても少し光明が見えてきているのだろうか。今回は全体として挑戦的な作品が集まったように感じている。その中で順当な結果となったことに満足している。

藤田 志朗(日本画家、創画会常務理事、筑波大学名誉教授)

今回も各大学より推薦された20作品を拝見し、その中から8点の作品を賞候補として選ばせていただきました。

全体的な印象としては、昨年の20作品に比べると今回は一人一人の作品への制作意図が強く感じられる作品が多かったように思いました。

選んだ8作品の内、6作品が大賞、準大賞、奨励賞のいずれかに入りました。特に大賞「白班」、準大賞「untitled(Bacchus4)」は絵肌が対照的ではあるものの、作者の主張が強く感じられる秀作だと思いました。優秀賞に選ばれた日本画の2作品はそれぞれに素材の使い方は違うものの、描こうとする作品への真摯な姿勢がうかがえ、賛同できる作品だと思いました。

また、奨励賞や特別賞に選ばれた5作品や賞に選ばれなかった中にも的確な表現力を感じる作品や画面から強い熱意が感じられる作品が多くありました。参加した皆さんには「絵画の筑波賞」展に出品しただけにとどまらず、会場に足を運んでいただき、同世代の作品から刺激を受けることを糧として制作活動を今後とも永く継続していただきたいと思います。

会期・会場

第4回「絵画の筑波賞」展

つくば展

会  期:2023 年 5 月 14 日(日)〜  28 日(日)
※最終日 5 月 28 日(日)は午後 3 時に閉場いたします。
会  場:スタジオ’S
お問合せ:029(860)5151〈関彰商事(株)総務部〉※平日午前 9 時から午後 5 時まで。
開場時間は午前 11 時から午後 6 時。
所 在 地:〒305-0051 茨城県つくば市二の宮 1-23-6 関彰商事(株)つくば本社敷地内
U R L:https://sekishostudios.jp/

池袋展

会  期:2023 年 8 月 23 日(水)〜  29 日(火)
※最終日 8 月 29 日(火)は当会場のみ午後 4 時に閉場いたします。
会  場:西武池袋本店 6 階(中央B7)= アートスペース
お問合せ:03 (5949) 5348 <直通電話>
営業時間は午前 10 時から午後 9 時。
なお、日曜・祝休日は午前 10 時から午後 8 時まで営業いたします。
営業時間変更の際は、西武池袋本店ホームページにてお知らせいたします。
状況を鑑み、掲載企画を中止・延期とする場合がございます。
所 在 地:〒170-0013 東京都豊島区南池袋1-28-1
U R L:https://www.sogo-seibu.jp/ikebukuro/